2020-05-10

母が亡くなり、一ヵ月ほど経った。
まだ実感はわかないが、静かに見送ることができてよかったとあらためて思う。

私たちと、とても近しい関係にあった人が亡くなると、その後の数カ月の物事の進行のうちには何かしら――それをあの人と分かち合いたかった、と私たちがどんなに願うにしろ――やはりあの人の不在によってのみ生じえたのだ、と思えるようなものがある。私たちは亡き人に、その人がもはや理解しない言葉で、最後のあいさつを送る。

ヴァルター・ベンヤミン『一方通行路』(久保哲司訳)

父の会社が倒産して莫大な借金ができたとき、私は中学生だった。あなたはちょうどいまの私ぐらいの歳だったのではないか。
あれから何十年も、苦労に苦労を重ねたあなたが、もう心配ごともなく安らかに眠れているであろうことが願いだ。ありがとうございました。