観世能楽堂で「大槻文蔵 裕一の会」。冒頭、文蔵・萬斎対談の司会がなぜか亀井広忠先生で、これが最高(にチャーミング)。『海士』懐中之舞の小書、シテの大槻裕一が素晴らしかった。彼を筆頭に、宗家子息の観世三郎太、狂言方の野村太一郎、野村裕基ら未来を担う若き能楽師たちの奮闘が眩しい(子方・谷本康介も)。
続いて国立劇場で「詩歌をうたい、奏でる ―中世と現代―」。沖本幸子さん解説のもと中世芸能を復元する貴重な公演。大興奮。活字でしか知らなかった今様や乱舞、白拍子、乱拍子を淵酔の流れに沿って鑑賞。平安貴族が酔いにまかせて立った瞬間、節を崩した瞬間に、芸能の誕生を幻視。猿楽の能まであと少し。
解説・小沼純一のもと、川島素晴、Marc David Ferrum、桑原ゆうによる「ベルリン連詩Ⅱ」の初演もよかった。中世と現代を接続することで、孤であり、集団での遊びでもある歌のあり方がより浮かび上がるのだった。